夕方、なんとなくテレビをつけたら、ドラマの再放送をやっていた。異常なまでに顔を接近させて議論している医師二人。若き織田裕二と石黒賢。今から十六年前(一九九三年)に僕が初めて書いたドラマ「振り返れば奴がいる」だった。
自分の作ったものは、まず観直さない。改めて観ても、(自分はなんてひどい台詞をかいてしまったんだ)と落ち込むのが関の山だから。このドラマも、放送時に観たのが最後かもしれない。まさに十六年ぶりの再会。最初はすぐにチャンネルを変えるつもりだったが、これだけ時間が空いてしまうと、自分が書いたという意識もほとんどなくなっていて、ついつい最後まで観てしまった。
僕は整合性を大事にするライターである。それは今も昔も変わらない。「振り返れば~」のメーン演出家は、むしろ整合性などよりも、物語の勢いを優先する人だった。改めて観ると、やはりいろんなところで辻褄が合わない。台本としてはかなりいびつ。今はもう腹は立たないが、十六年前の僕はきっとこれを見てのたうちまわっていたんだろうなと、気の毒になった。
辻褄は合っていなかったが、ドラマは最後まで緊張感が持続する、見応えのあるものだった。ようやく当時の演出家がこだわっていたことが何だったのかが、分かったような気がした。
そして織田裕二さん。彼はこの作品に並々ならぬ情熱を注いでいた。僕の書く台本に、毎回、プロデューサーを通じて感想&意見を伝えてきた。(なかなか面倒くさい人だな)と正直思ったが、その後、今に至るまで、そんな俳優さんには一度も会っていない。それだけ彼はこのドラマに賭けていたのだろう。今年の春、テレビ局で久々にお会いした時も、「僕はあの作品が大好きなんです」と言っていた。
病院なのに医者が少なすぎるとか、医療器具がやけにチープだとか、問題も多々あるが、自分で言うのもなんだけど、異様なパワーを感じるドラマだった。
それは織田さんが注いだ情熱の成果なのかもしれない。そして、これからドラマの世界で頑張っていくんだと意気込んでいた新人作家の熱意も、ほんのちょっとね。
(三谷幸喜「十六年ぶりにふれた熱気」『三谷幸喜のありふれた生活9 さらば友よ』2011年、朝日新聞社)